中小企業からグローバル企業に至るまで、ライフサイエンス企業は一定レベルの業務非効率を容認してきました。
これまで、ソフトウェアの選択と導入において、異なる拠点や部門がそれぞれ独自性を持っていたため、スムーズに統合されたシステムはなく、複数のベンダーや製品がパッチワークのように混在していました。しかし、完全に統合されたeQMS環境をサポートするクラウドベースのソリューションの進化により、これまでの期待が一変してきており、現実を変えようとしています。

クラウドはライフサイエンス業界を発展させられるか? 

技術的な統一性の欠如は、組織の能力に深刻な影響を与える可能性があります。
主要なビジネス要素を分離したままにしておくと、あらゆるレベルで組織のパフォーマンスに悪影響を及ぼし、摩擦や盲点を生み出すことになるでしょう。 

どの業界にも当てはまることですが、ライフサイエンス業界にとっては、とくに深刻な問題です。医薬品や医療製品を開発・販売する企業は、複雑な規制環境の中で事業を展開し、国民の健康と福祉を守る責任を負っています。このため、ビジネス・プロセス全体にわたるエンド・ツー・エンドの調整と可視性が、細部に至るまで強く求められています。 

このような厳しい状況の中、ライフサイエンス企業は、高度に規制された環境下で事業を行いながら、効率的かつコスト効率の高い業績を上げなければならないというプレッシャーに直面しています。おもに直面しているのは、下記5つのプレッシャーです。

– 医療分野におけるコスト制約の増大により、価値と結果を実証する必要性が増加
– 市場への早期参入の必要性により、研究開発におけるパイプラインが加速化
– 成熟市場および新興市場におけるビジネスチャンスによる、グローバルな事業展開の増加
– 支払者、医師、患者との関係が重視されるように
– 社内外を問わず、これまで以上に複雑なデータ管理の必要性

残念なことに、従来のソフトウェアでは、先進的なライフサイエンス企業となるには、足かせとなる可能性があります。たとえば、1つの企業内で、営業活動や関係構築活動を管理するためにあるソリューションを使い、市場での製品を追跡するために別のソリューションを使い、文書管理のために別のソリューションを使い、業務効率を監視するために別のソリューションを使う、といった具合です。

このような断片的なアプローチは、ますます厳しい経営課題に直面している部門・分野で、競争力を著しく低下させる可能性があります。 

従業員レベルでは、異なるソフトウェア・ソリューションや不十分な接続のソフトウェア・ソリューション間を行き来する必要性は、従業員に負荷を与え、フラストレーションを生じさせます。従業員は、複数のシステムを学習したり、あるシステムから別のシステムへ情報を再入力したり、特定のイベントや問題を監視または理解するために手動でデータを収集・操作したりするなど、貴重な時間を費やさなければなりません。組織レベルでは、洞察力の創出、関係の構築と維持、問題や機会への迅速な対応など、競争における主要な差別化の妨げになる可能性があります。 

クラウド・ソリューションは、ライフサイエンス企業にとって、その可能性を再定義してくれるものです。クラウドにリソースを統合する傾向が続く中、ライフサイエンス企業には、コンプライアンスを犠牲にすることなく、新たなレベルの業務統合、調整、コスト効率を達成するチャンスがあります。クラウドベースの環境またはエコシステム(単一のプラットフォーム、または、アーキテクチャが、さまざまなベンダーのさまざまな互換性のあるソフトウェアをサポートする場合)なら、多くの組織が真の可能性を達成するのを妨げている断片化と摩擦を大幅に削減できるようになります。

ライフサイエンス企業における問題を探る 

バラバラのソフトウェア・ソリューションに依存し、統合されたエコシステムによってサポートされていないライフサイエンス企業では、多くの課題が発生します。 

1.ソフトウェアコストの上昇

複数の異なるベンダーからソフトウェアを購入することは、複数のベンダーをサポートする統合システムを購入するコストと比較すると、コスト効率が悪くなります。単一のシステムに投資すれば、購入した企業は、数量割引やスケールメリットを享受できます。さらに、異なるソリューションがオーバーラッピング、つまり、重複した機能を持つ場合、同じ機能に対して二重に支払わずに済むメリットも得られるでしょう。 

2.運用コストの増加

既製のソリューションであれ、カスタムビルドであれ、企業が統合されたクラウド環境を持たないソフトウェアに対して投資すれば、従業員はソリューションはもちろん、複数のシステムの使い方を学ぶ必要があるため、スタッフのトレーニングなど多くの費用がかかります。

また、社内ソフトウェア・ソリューションの場合、IT 部門の関与やトラブルシューティングのレベルも高くなり、その結果、コストも高くつきます。社内ソリューションでは、新しい基準やセキュリティ要件に対応するために、ソフトウ ェアをアップグレードする際のコストも高くなるでしょう。さらに、データの再入力など、手間となる手作業に時間を費やすことになるなど、非効率が生じる原因となる「統合性の欠如」に起因するコストが、組織内で増加する可能性もあります。 

3.可視性の低下

ビジネスプロセスが、同じ統合環境を共有するのではなく、一連の独立したソリューションで管理されている場合、意味のある洞察を生み出す情報の流れが妨げられ、盲点が生まれます。 つまり、パフォーマンスの問題を隠してしまう可能性があります。しかし、CRM、人事、マーケティング、コンプライアンス、財務など、すべてのビジネス活動が単一のプラットフォームに統合されれば、組織のパフォーマンスを最適化でき、端から端まで全体像が見通せるようになります。 

4.連携の低下

異なる部門間、拠点間、施設間の連携があれば、コミュニケーションとパフォーマンスを向上できます。しかし、スタンドアローンのソリューションが互いに会話できるように設計されていない場合、組織のさまざまな部分の業務を効果的に同期させることは困難です。その結果、組織の非効率性、調整不足、エラーや見逃しの可能性が高まります。 

5.成長の妨げ

ほとんどの組織は成長を歓迎し、持続的に成長する機会を積極的に追求するものです。しかし、企業の中核となるソフトウェア・プロセスが容易に拡張できるように設計されていない場合、その成長率は鈍化することになります。

従来のソフトウェア では、新機能の開発や導入へのリードタイムが長くなってしまったり、追加ユーザーをサポートするために容量を増やす必要がありました。一方、クラウド・ソリューションでは、大きな拡張性がシステムに組み込まれており、時間のかかる新規構築ではなく、APIを使用して新しい機能をシステムに組み込めます。 

ライフサイエンス企業における解決策の検討 

統一されたクラウド環境とベンダーのエコシステムに支えられた統合ソフトウェア・ソリューションは、ライフサイエンス業界の業務効率を劇的に改善し、多くの伝統的な課題を解決しています。 

販売、カスタマーサービス/コールセンター、コンプライアンスなど、幅広い業務機能を単一の統合プラットフォームでサポートできるようになったことで、ライフサイエンス企業は、従来の社内ソフトウェアモデルでは不可能だった、コストの最小化、可視性と制御の最大化を実現できました。 

たとえば、Salesforce.com プラットフォーム上に構築されたクラウドベースのコンプライアンス・システムである Sparta Systems のソリューション 「TrackWise Digital(トラックワイズデジタル) 」をキャップジェミニが最近評価したところ、初期および長期的なコスト、統合性、設定可能性、その他多くの重要なビジネス要件のにおいて、高い優位性があることが実証されました。5年間で、コンプライアンス・ソフトウェアの総所有コストは、クラウドベースのソリューションの方が3分の1以上低くなると予測されています。 

こうしたコスト削減は、以下のようないくつかの重要な要因に由来するものです。 

– 初期投資が不要

ソフトウェアやハードウェアを購入するのではなく、組織は毎月ユーザーごとのサブスクリプション料金を支払います。 

– メンテナンス費用がかからない

更新や改善はベンダーが管理し、追加料金なしで即座に組織にアップデート版が提供されます。 

– スケールメリット

単一のソフトウェアエコシステムが「ワンストップショップ(ある分野において、関連するあらゆる商品を取り揃える販売形態)」を提供することで、組織は購買力を強化し、予算をさらに伸ばせます。

しかし、ライフサイエンス企業がクラウドへの移行を選択する場合、通常はコスト削減が決め手にはなりません。むしろ、大半の組織がクラウドに魅力を感じているのは、運用面や戦略面でのメリットです。

統合されたビジネス・プロセス

ライフサイエンス企業は、クラウドを利用することで、これまでは別々に管理する必要があったビジネスプロセスを統合できるようになります。製造、倉庫管理から販売、CRM、コンプライアンスに至るまで、医薬品や医療機器のライフサイクル全体を監視、分析、最適化が可能です。同様に重要なことは、組織が単一のソフトウェア・エコシステムによって支えられている場合、報告、コミュニケーション、データ入力など、あらゆるタスクや機能がより迅速かつ容易に実行され、より正確で、フラストレーションが少なくなれば、生産性が向上するということです。

クラウドの成長トレンド 

・87%の企業がクラウドを利用し
・65~70%の企業が、今後1~2年のうちに一部のプロセスをクラウドに移行する予定
・69%の中小企業が、今後3年間でクラウドの利用を増やす見込み
・1~11,493 クラウドAPIの数が、2005年以降、1~11,493に増加

出典:ラックスペース、デロイト、ノースブリッジ / ギガOMリサーチ 

人間関係の改善

社外の人々と交流し、より良いユーザー・エクスペリエンスを提供できる能力は、重要な成功要因です。
クラウド・ソリューションにより、ライフサイエンス企業は、臨床医、医療機関、医薬品や医療機器のエンドユーザーと、より直接的かつ個人的なレベルで関われるようになります。コールセンター、ウェブベースやモバイルでの報告、ソーシャルネットワークなど、クラウドを利用するライフサイエンス企業は、さまざまな人々とより効果的に関わり、交流することが可能です。その結果、患者の転帰が改善されるだけでなく、顧客やサービス・パートナーとの関係が強化され、市場のニーズや嗜好に対する理解が深まります。 

より良いデータ、より深い洞察

異なるビジネス・プロセスがデータを自由に交換・集約して互いに「対話」できない場合、組織は全体像ではなくパズルの一部しか見えません。クラウドエコシステムでは、ゲームチェンジング的な分析と洞察の機会を創出します。組織内およびパートナーやユーザーから収集したデータを共有、集約、分析する能力は、アクセンチュアやデロイトなどの組織によって、ライフサイエンスにおける最もエキサイティングなトレンドの1つであると同時に、最も重要なトレンドの1つであると認識されています。
複雑な規制環境で求められる報告義務の強化に対応し、かつ、厳しい市場で競争力を獲得するためには、ビジネスのあらゆる部分からデータに自由にアクセスし、集約する能力が不可欠です。 

より速い成長

どの組織も成長機会を重視しており、それはライフサイエンス企業も例外ではありません。しかし、成長をサポートするソフトウェアの導入に数か月もかかるようでは、チャンスをつかむことは困難です。まとまったインフラを持たず、自社でメンテナンスしているソフトウェア環境は、柔軟性に欠け、適応に時間がかかり、スケールアップや新機能の獲得に多大なリソースを必要とするため、成長の妨げになる可能性があります。

これとは対照的に、クラウド環境では、先行投資なしで即座にスケールアップが可能です。また、新しい機能が必要になった場合は、ベンダーのエコシステムからソフトウェア・ソリューションを選択し、組織の既存のインフラに組み込むだけで済みます。これほど高いレベルの拡張性、適応性、応答性は、クラウド以外で実現するのは非常に難しいでしょう。 

イノベーションの支援 

ライフサイエンス企業にとってのクラウド・コンピューティングの真価は、イノベーションを支援する能力にあります。統合性、互換性、拡張性に優れた環境を提供することで、クラウドは、関係構築、コラボレーション、ビジネスプロセス統合、俊敏性、データアクセスなどの主要分野における境界や制約を取り払うことに成功しました。しかも、マルチプラットフォーム構造であるため、どのような規模の組織であっても、手頃な価格でこれらの機能を提供できます。 

「TrackWise Digital」について 

「TrackWise Digital」は、スパルタ・システムズのソリューションであり、市場で初めて100%クラウドで提供される電子品質管理システム(eQMS)です。このソフトウェアは、サブスクリプション・ベースで利用でき、完全な品質、苦情、トレーニング管理、文書管理ソリューションが含まれています。このシステムは21CFR Part 11(820、821、210、211を含む)に準拠しており、最先端のSalesforce.comプラットフォーム上で提供され、オンラインWebアプリケーション、完全モバイル、オフライン機能を備えています。「TrackWise Digital」は、すぐに使えるコンプライアンスと、クラウドの手軽さと費用対効果を兼ね備えた唯一のソリューションです。 

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