QMS(Quality Management System)とは、日本語で「品質マネジメントシステム」といいます。製造業やライフサイエンス業界で使われることが多く、聞いたことのある方もいるのではないでしょうか?
今回はそもそもQMSとは何なのか、ISO9001との関連や導入のメリットをご紹介します。
QMS(品質マネジメントシステム)とは?
QMS(品質マネジメントシステム)の概要
QMS(品質マネジメントシステム) とは、組織が商品・サービスの安定的な品質を確保するために、製造から納品までを管理し、改善を継続的にする仕組みのことです。
組織内で品質基準を関係者全員で定義し、その基準を守り、安定的な品質を保った商品・サービスを顧客に提供し、その顧客から信頼を得ることを目指します。
具体的には「不良品の比率を下げ、生産性・顧客満足度を上げる」、「顧客からの要望やクレームといった意見を商品・サービスの品質改善に反映させる」ための仕組みがQMSなのです。
QMS(品質マネジメントシステム)ができることは?
QMSは品質の改善・向上のために幅広い機能を提供します。具体的には、以下のことが挙げられます。
安定した品質を保証
組織は商品・サービスに関する品質基準を明確に定義し、それらの基準を遵守することを関係者全員で確認するので、安定した品質が確保されます。
業務プロセスの改善し、生産性向上を目指す
QMSは生産工程や業務プロセスを評価し、その分析と改善のサポートをします。効率的な生産工程や業務プロセスを確立できれば、品質の向上とコスト削減や業務フローの最適化が実現できるでしょう。
リスク管理と法令遵守
法令を遵守した生産工程や商品・サービスそのものの管理ができるQMSは、起こりうるリスクを想定し、対策を講じる仕組みがあります。これによって不良品やリコールといったリスクを削減し、信頼性を向上させます。
顧客との信頼関係構築
QMSにより、安定した品質で信頼性の高い商品・サービスを提供できるので顧客の満足度を上げ、信頼関係を構築できます。
また、前述のとおり業務効率を改善し、生産性向上ができるので、期限を守って商品やサービスのご提供も可能です。
マネジメントシステムとは?
マネジメントシステムとは、組織を効率的にコントロールし、目標達成に向けた方針と手法を体系的に組み込んだルールや仕組みをいいます。つまり、QMSは顧客満足度の向上を目標に、品質管理に特化したマネジメントシステムということです。
他にも環境マネジメントシステム(ISO14001)や労働安全衛生マネジメントシステム(ISO45001)など、さまざまな業界に対応したマネジメントシステムも存在します。
ISO9001とは?
ISO9001は、品質マネジメントシステムに関する国際規格。世界で最も普及している規格で、全世界で170ヵ国以上、100万以上の組織が利用しています。
そもそも「ISO」とは、スイスのジュネーブに本部を構える国際標準化機構のことで、彼らが制定した規格を「ISO規格」といいます。これは、国際的な取引をスムーズにするために、考えられた製品・サービスの国際的な基準です。
ISO9001の概要と取得方法
前述の通り、ISO9001は国際的な品質管理、品質保証の規格です。この規格は「顧客満足の向上」「一貫した製品・サービスの提供」を実現するための「要求事項」を定めています。
ISO9001を取得するには、この「要求事項」と呼ばれる上記2点の要件に沿って、QMSを構築すると認証を受けられます。
ISO9001の認証取得のメリット・デメリットは?
ISO9001の取得には次のようなメリットとデメリットがあります。
<メリット>
社会的信頼の獲得
外部の第三者機関からの認証を得ることで、組織内外に説明責任を果たすことができます。
例えば、諸外国からの国際的な信頼を得られ、取引に有利に働いたり、国内の取引でも顧客の信頼獲得、組織の活性化に一役買います。
継続的な品質改善
ISO9001は「一度取得したら終わり」というものではなく、毎年審査を受ける必要があります。このようにすることで安定した品質を維持・不良品比率の削減、品質改善といった改善ができます。
第三者視点による問題発見
ISO規格には、組織を管理・運営するために必要な「要求事項」があり、組織がその要求事項を満たしているか細かく確認しています。もし不適合になった場合は、その原因を取り除く是正処置を行わなければなりません。このように、外部の視点から問題発見をすることで、QMSの改善ができます。
一方で、取得にはいくつかのデメリットがあることも理解しましょう。
<デメリット>
コストと労力
ISO9001の取得にはコストと労力がかかります。認証プロセスや内部監査の実施などに時間と人手を要します。しかも毎年審査があるので、その準備や対策にも人手が必要です。
運用負担
ISO9001要件に基づくQMSの運用は、従業員の協力を必要とし、組織全体のコミットメントが求められます。
組織の特性や目標に合わせて、取得のメリットとデメリットを検討しましょう。
各業界の品質管理が抱える課題
QMSは、顧客満足度の向上を目指し、品質の継続的な改善を行う仕組みです。今回はQMSを多くの組織で導入しているライフサイエンス業界と製造業に焦点を当てて、両業界が抱える課題とその解決方法を探りましょう。
ライフサイエンス業界の品質管理の課題とは?
ライフサイエンス業界とは、医薬品・バイオテクノロジー・医療機器・バイオマテリアルなど、生命科学に関連する製品や技術の開発・製造・流通・販売・研究を行う産業のことです。
人命に直結する性質を持つため、製品の品質と安全性に厳格な規制と監視が求められる一方で、以下の課題にも直面しています。
「成功事例」の活用不足
一般に、業界の「成功事例」が確立されており、そこから学べば品質の確保だけでなく、法令遵守にも役立ちます。しかし、現時点では成功事例の活用が十分ではありません。
システムのスケーラビリティの欠如
組織は規模に関係なく成長を目指しており、QMSは組織の成長と合わせて拡張できるようになっていなければなりません。システムの拡張性の欠如は、組織の成長の妨げとなるでしょう。
システムのサイロ化
上手くQMSの連携がとれていない、つまりサイロ化は避けたい課題です。サイロ化への対策は効率と品質管理への迅速な対応を実現する上で最も重要な鍵の1つです。
所有コスト
多くのIT企業ではすでにリソースが限られています。ITリソースへの依存を最小限に抑えることは導入の迅速化を意味します。クラウド型の場合は、メンテナンスやアップグレードが時間通りに実施できるので安心です。
ライフサイエンス業界にQMSを導入するメリットは?
QMSの導入は、ライフサイエンス業界の課題に対する有効な解決策として以下のメリットをもたらします。
品質向上
QMSは製品の生産から流通までのプロセスを体系的に管理し、品質を継続的に向上させる枠組みを提供します。これにより、不良品の発生や品質の低下を最小限に抑えることが可能です。
また、製造工程のQMSが統合できれば、是正措置の必要が生じた場合、アラートによって把握することができます。
効率の改善
生産施設間、地理的に分散した拠点間、さらには新設企業や合併企業との間で製造工程を統合・合理化できることから、業務の効率化が進みます。
一元化されたソリューション
あらゆるQMSに、ワンストップのデジタルシステムを使用することにより、サイロ化が解消されます。こうすることで、業務プロセス全体にわたるクローズドループ型の追跡・報告が可能になります。
ITチームへの最小限の影響
クラウドベースのQMSなら、ITチームへの影響を最小限に抑えます。なぜなら、クラウドプロバイダーのサーバーは、常にシステムを維持管理できる状態に保たれているからです。
品質チームは、最新の機能アップグレードやセキュリティーアップデートを利用することができ、ITチームがインストールしてくれるまで待つ必要がなくなりますので、ITチームはその他の付加価値活動の実行に集中できるようになります。
総じて、ライフサイエンス業界におけるQMS導入は、品質と安全性の確保だけでなく、業務の効率化と競争力の向上にも寄与する重要な取り組みと言えるでしょう。
製造業が抱える品質管理の課題とは?
製造業では、製品の品質を確保することが重要ですが、品質のばらつきや欠陥、生産ラインの停止などの問題が、顧客満足度や企業の信頼性に影響を及ぼすことが課題となっています。
製造業にQMSを導入するメリットは?
QMSの導入は、製造業において多くのメリットをもたらします。
品質向上
QMSは製造プロセス全体を体系的に管理し、品質を継続的に向上させます。これにより、不良品の発生を減少させ、製品の信頼性を高めることが可能です。
効率の改善
QMSは作業手順や品質基準を標準化するため、生産プロセスの効率が向上します。生産ラインのスムーズな運用が促進され、無駄な時間やリソースの浪費を減少させます。
規制遵守
製造業は厳格な規制を遵守する必要があります。QMSはこれらの規制に準拠するための体制を整え、法的なリスクを軽減します。
リスク削減
QMSは問題の早期発見と対処をサポートします。品質に関するデータを分析し、潜在的なリスクを特定することで、リコールや不良品の発生を防ぎます。
顧客満足度の向上
高品質な製品を提供することは顧客満足度の向上につながります。QMSの活用で品質を確保し、信頼性のある製品を提供することで、顧客の信頼を獲得できます。
QMSの導入は、品質の向上、効率改善、法令遵守、リスク軽減、顧客満足度の向上といった多くのメリットをもたらします。これにより、製造業は競争力を向上させつつ、高品質な製品を提供できる体制を築くことができます。
QMS(品質マネジメントシステム)の導入メリット
もちろん、QMSはライフサイエンス業界や製造業以外でも多くの導入メリットがあります。具体的なメリットとそれによって解決される問題について説明します。
顧客満足度の向上
生産工程、業務プロセスの改善を通して、商品・サービスの品質を向上させます。QMSを導入すれば、顧客の期待に応え、一貫性のあるサービス提供が可能となり、結果として顧客満足度を向上させます。
効率の改善
QMSを活用すれば業務プロセスを標準化し、無駄な手間やリソースの浪費を減少させます。作業の効率が向上し、生産性が向上します。
リスクの軽減
QMSは問題の早期発見と対処をサポートしてくれます。品質データの分析やトレーサビリティの向上によって、リスクを軽減し、不良品やミスの発生を防ぎます。
法令遵守
QMSは業界の規制や基準に適合するための体制を整えます。法的なリスクを低減し、業界規制に対するコンプライアンスを向上させます。
QMSは組織の品質向上と効率化を促進し、顧客満足度の向上に貢献します。組織が品質を重視し、一貫して高い水準の製品やサービスを提供するためには、QMSの導入が不可欠です。
Honeywellの「TrackWise Digital 」で効率的な品質管理を
Honeywell の「TrackWise Digital 」はクラウド型のQMSです。組織の全拠点に初期費用を抑えて導入でき、業務プロセスの一元化とコスト削減をかなえることができます。
実際にHoneywellの「TrackWise Digital 」を世界中の拠点に導入したエーザイ株式会社様は、全社の業務プロセスを一元化し、ひとつのプラットフォームで管理することで市場での競争力が高まりました。
その導入の背景、効果の詳細はこちらでご覧ください。(導入事例にリンク)
「TrackWise digitalの導入事例:エーザイ株式会社様 一元化したQMSで安定した品質管理を実現」を見る
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